児童文学がすごい(1)

「宇宙少女アン」が「ベティアンよ帰れ」の短編版だったことを知ったため『変身願望~メタモルフォーゼ』を購入。
話のなかではベティアンと呼ばれているのになぜ「宇宙少女アン」という題名を付けたのだろう。福島正美らしからぬ題名の付け方に思えるのだけれど、当時の流行の付け方だったのか、それともやっつけ仕事だったせいなのか。
児童向けのアンソロジーとはいえ、この『ポプラ社SFセレクション』、なんとも編者の邪悪な意志が感じられるような凄まじい作品ばかり選ばれている。
たとえば『宇宙の孤独』ではロバート・リードの「棺」やブラウンの「緑の地球」が入っている。確かに「棺」は傑作に間違いはないのだけれど、ふつう児童向けに入れないだろう。両方とも宇宙でほんとに孤独になっちゃう救いのない話。
一番凄まじいのが『地球最後の日』だ。
収録されている、那須正幹の「The End of the World」と川島誠の「電話がなっている」は、かつて『だれかを好きになった日に読む本』に収録されたものだが、この『だれかを好きになった日に読む本』は誰かを好きになったときに読むのに全くふさわしくない話が目白押しだったことで有名なトラウマ本だ。子供の時に読めば必ず後悔する。
「電話がなっている」は現在『セカンドショット』で、「The End of the World」は『The End of the World』で今でも読めるが、『The End of the World』のほうは、あのずっこけ探偵団シリーズの作者とは思えないほどトラウマになりそうな話が表題作以外にも収録されているので大人にはお勧め。
この二つだけでもすごいのに、さらに三田村信行の「おとうさんがいっぱい」まで入っているのだ。三田村信行といえば子供が読んだらトラウマになりそうな話ばかりを書いている作家である。
佐々木マキの表紙で『おとうさんがいっぱい』という本が出版されているが、おとうさんがいっぱいではなく救いのない話がいっぱい。表紙の絵にだまされてはいけない。
地球最後の日に関係ない話ばかりの『地球最後の日』だが、この本を読み終えた子供は、地球最後の日を迎えようとしている気分にさせられることだろう。
『変身願望~メタモルフォーゼ』でも、星新一の「空への門」が入っているのは編者の邪悪な意志が感じられる。
ラインナップはすごいが、子供に読ませたいかどうかは全く別な児童向けのアンソロジー集。
ビバ!赤木カン子

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