児童文学がすごい(3)


ぼくらのサイテーの夏 笹生 陽子
「階段落ち」で手首を捻挫した主人公は、栗田と夏休みの4週間プールそうじの罰を受ける。
中心となる物語は王道の中の王道といえる成長物語なのだが、引きこもり、家庭崩壊、自閉症と現代風の味付け。しかし、そういった悲惨な状況を、露骨な表現や描写をせずに子供の視点から語っているのは、あたりまえといえばあたりまえなのだけれどお見事としか言いようがない。
物語の中に、こんなエピソードがある。
時間を守るということに対して、主人公の父親は主人公に、「おまえが10分間でマンガを10ページ読むことができたとして、おまえが待たせた相手は、倍のページを読めたとする。そうすると、おまえはたった10分ぽっちと思っても、相手は10分も待たせやがってと思うかもしれない」
時は誰にでも一様に同じ速度で流れているのではなく、人によってその流れの速度は異なっている。
SFでもない児童文学で、こんなセンスオブワンダーな表現に出会うとは思っても見なかったです。

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