原題は「Being there」
ピーター・セラーズ主演の映画「チャンス」の原作。この映画に原作があるとは知りませんでした。
もう一つ知らなかった事と言えば、この映画がピーター・セラーズの遺作だと思っていたら、遺作じゃなかったってこと。
主人公のチャンスは庭の話しかしていないのに、周りの人間が勝手に誤解をしてチャンスをすごい人間のように思ってしまうのは映画と同じだが、主人公の内面描写があるせいで、主人公チャンスは映画ほど無垢ではなく、わりとしたたかな人間のように見えてしまうのが映画と大きく違うところ。
しかし、したたかな部分があるのは作者のものすごい経歴を考えれば無理もない話かもしれない。
なにしろ、第二次世界大戦中は両親と生き別れ浮浪児として生活。戦後になってほとんど無一文で、ポーランドからアメリカへ亡命。
しかし英語がまったく出来なかったので3年間猛勉強してコロンビア大学在学中に作家デビュー。
これだけでも凄まじい人生だが、結末の付け方もまたすごい。
57歳のとき自宅の風呂場でビニールの袋を被ったまま窒息死。遺書があったので自殺とされる。
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアといい勝負である。
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