「タフの方舟1 禍つ星」

タフの方舟(1) 禍つ星

コメント

  1. 『タフの方舟 2 天の果実』

    あこぎな商人、再び( ‥)/
    しかも、「宇宙一」あこぎなのだ。
    おまけに、主人公タフは、明確なポリシーを持っている。
    それは、人も動物も(わけても、ねこを)ことのほか大切にする、ということ。
    だからといって、一部の小乗仏教のお坊さんのように、蟻一匹踏みつぶしません、というわけではないけどな。
    ともあれ、このタフの特徴が最も良く表されているのは、本巻の収録作『魔獣売ります』だ。
    タフが訪れることになった惑星では、いくつかの有力な「家」が、それぞれ、闘技場に獣を送りこんでいるのな。
    闘犬とか闘鶏を、もっと大規模で派手にしたみたいなもんだと思えばいい。
    こういうものって、エスカレートしがちだけど、とうぜん、タフが仕事を依頼されたということは(タフは、商人だけれど、環境エンジニアでもあり、いろんな生物を生み出せるので)、無敵の獣がほしい、という事だったわけだ。
    そうなれば、他の「家」もタフに同じ事を頼んでくるのは、誰だって予測できるだろ?
    もちろん、タフには、そんな事、最初からわかっている(タフはゲームの達人でもある)。
    だから、とっても巧妙に、かつあこぎに、最終的には全ての「家」に対して、強力な獣を売りつけるわけなんだけど。
    その時、ちょっとした、
    「……わかりました。では、これにつきましては手前の無料サービスという事にいたしましょう」
    なーんて形で、ある仕掛けをするわけだ。
    だって、そうだろ?
    タフは、生き物の命が大切なんだよ。
    そもそも、獣どうしを戦わせる遊びなんて、好むわけがない。
    わりと、『魔獣売ります』の手口は、読者にとってわかりやすいけれど、それでも、にやりとしてしまう、楽しいラストだ。
    タフは、命を愛する男だ。
    でも、決して、ただ働きはしない。
    その上で、自分の信条も、ちゃんと守ってしまう。
    ジャック・ヴァンスの『魔王子』シリーズその他のように、すごくピカレスクな雰囲気かと思えば、実はそうでもなくて、やっぱ、「悪党」ではなく、「あこぎ」なんだろうなあ。
    なんつっても、最初から最後まで、商人らしく腰が低い、でも決して相手におもねらないというところが、良いよな。
    ところで、第1巻と同じく、今回もわりと聖書からとってきたモチーフが見られるんだけど、今回のは、『出エジプト記』あたりを読んでおけばわかりやすい。
    モーゼがもたらす十の禍、炎の柱、天から降るマナ、なんてモチーフはだいたいそこに載ってるはずだ。
    もっとも、例によって、聖書の知識がなくても大丈夫。
    面白いよ。
    目次————————–
    タフ再臨
    魔獣売ります
    わが名はモーセ
    天の果実
    ——————————
    著者: ジョージ・R・R・マーティン, 酒井 昭伸
    タイトル: タフの方舟 2天の果実
    ハヤカワ文庫SF
    2005年5月31日新刊

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