久しぶりにSFらしいSFを読んだという感じです。もっとも、私の好きなジャック・ヴァンス風味が効いていたというせいも多分にありますが。
それにしても帯に書かれている「ジュラシックパーク」や「ハイペリオン」はどうかと思うのだけれど…。「ジュラシックパーク」と共通点があるのは第一話のごく一部だけだし、「ハイペリオン」はどう関係するのかよくわからない。ひょっとしてジャック・ヴァンス風という部分なのか?
解せないといえば、「宇宙一あこぎな宇宙商人」といっておきながら、あこぎと思えるのは第3話だけというのもどうかと思う。まぁ、2巻では全編あこぎなのかもしれないけれど。
第一話は、方舟を自分の物にしようとタフ以外の人間がみんな丁々発止の攻防を行っている中で、自らの手で殺してしまった猫のクローニングにひとり、精を出すタフ。いかにも人を食ったような性格のタフらしい愉快な話。第二話になると、やり手のスティール・ウィドウが副主人公として登場するけれど、スティール・ウィドウであってもマイペースかつしたたかなタフの行動にきりきりまいさせられてしまう。第三話では事件の真相にSF的な広がりを見せ、そしてタフのあこぎさも…。それにしても愉快痛快な話でした。
来月の2巻目が楽しみです。
それにしても帯に書かれている「ジュラシックパーク」や「ハイペリオン」はどうかと思うのだけれど…。「ジュラシックパーク」と共通点があるのは第一話のごく一部だけだし、「ハイペリオン」はどう関係するのかよくわからない。ひょっとしてジャック・ヴァンス風という部分なのか?
解せないといえば、「宇宙一あこぎな宇宙商人」といっておきながら、あこぎと思えるのは第3話だけというのもどうかと思う。まぁ、2巻では全編あこぎなのかもしれないけれど。
第一話は、方舟を自分の物にしようとタフ以外の人間がみんな丁々発止の攻防を行っている中で、自らの手で殺してしまった猫のクローニングにひとり、精を出すタフ。いかにも人を食ったような性格のタフらしい愉快な話。第二話になると、やり手のスティール・ウィドウが副主人公として登場するけれど、スティール・ウィドウであってもマイペースかつしたたかなタフの行動にきりきりまいさせられてしまう。第三話では事件の真相にSF的な広がりを見せ、そしてタフのあこぎさも…。それにしても愉快痛快な話でした。
来月の2巻目が楽しみです。
コメント
『タフの方舟 2 天の果実』
あこぎな商人、再び( ‥)/
しかも、「宇宙一」あこぎなのだ。
おまけに、主人公タフは、明確なポリシーを持っている。
それは、人も動物も(わけても、ねこを)ことのほか大切にする、ということ。
だからといって、一部の小乗仏教のお坊さんのように、蟻一匹踏みつぶしません、というわけではないけどな。
ともあれ、このタフの特徴が最も良く表されているのは、本巻の収録作『魔獣売ります』だ。
タフが訪れることになった惑星では、いくつかの有力な「家」が、それぞれ、闘技場に獣を送りこんでいるのな。
闘犬とか闘鶏を、もっと大規模で派手にしたみたいなもんだと思えばいい。
こういうものって、エスカレートしがちだけど、とうぜん、タフが仕事を依頼されたということは(タフは、商人だけれど、環境エンジニアでもあり、いろんな生物を生み出せるので)、無敵の獣がほしい、という事だったわけだ。
そうなれば、他の「家」もタフに同じ事を頼んでくるのは、誰だって予測できるだろ?
もちろん、タフには、そんな事、最初からわかっている(タフはゲームの達人でもある)。
だから、とっても巧妙に、かつあこぎに、最終的には全ての「家」に対して、強力な獣を売りつけるわけなんだけど。
その時、ちょっとした、
「……わかりました。では、これにつきましては手前の無料サービスという事にいたしましょう」
なーんて形で、ある仕掛けをするわけだ。
だって、そうだろ?
タフは、生き物の命が大切なんだよ。
そもそも、獣どうしを戦わせる遊びなんて、好むわけがない。
わりと、『魔獣売ります』の手口は、読者にとってわかりやすいけれど、それでも、にやりとしてしまう、楽しいラストだ。
タフは、命を愛する男だ。
でも、決して、ただ働きはしない。
その上で、自分の信条も、ちゃんと守ってしまう。
ジャック・ヴァンスの『魔王子』シリーズその他のように、すごくピカレスクな雰囲気かと思えば、実はそうでもなくて、やっぱ、「悪党」ではなく、「あこぎ」なんだろうなあ。
なんつっても、最初から最後まで、商人らしく腰が低い、でも決して相手におもねらないというところが、良いよな。
ところで、第1巻と同じく、今回もわりと聖書からとってきたモチーフが見られるんだけど、今回のは、『出エジプト記』あたりを読んでおけばわかりやすい。
モーゼがもたらす十の禍、炎の柱、天から降るマナ、なんてモチーフはだいたいそこに載ってるはずだ。
もっとも、例によって、聖書の知識がなくても大丈夫。
面白いよ。
目次————————–
タフ再臨
魔獣売ります
わが名はモーセ
天の果実
——————————
著者: ジョージ・R・R・マーティン, 酒井 昭伸
タイトル: タフの方舟 2天の果実
ハヤカワ文庫SF
2005年5月31日新刊