松村 栄子著
ここではないどこか別の世界。天には四つの月があり、地には紫の砂漠が広がっているその世界。生まれたときには性別の区別が無く、<真実の恋>をしたときに<守る性>と<生む性>に変化する人々が住んでいた。
この小説がファンタジーの皮をかぶったSFだということは知っていたのですが、今ひとつ興味が持てずに素通りしていた本です。
たまたま立ち寄った書店で売っていたというか返品もされずに残っていたので、これはもう読むしかないなと思い買って読み始めたのですが、読み終えて、今までこれを読まなかった自分に猛省を促したくなってしまいました。
驚くほど起伏のない物語展開で、語り口も物静か。「」を使わず<>で囲っているせいか、モノローグのようにも思えてしまう会話文も、その効果をいっそう高めてくれます。しかし最初のうちはなかなか話に乗れなかったのですが、うまく同調できるとこの文章が心地よさ変わります。
さらには、起伏のない穏やかな筆運びなので途中まで気付かないのだけれども、いざ気がついてみると作者にとんでもない場所に連れ去られていたことに驚きます。そして早いうちからある程度は予想はついてしまうけれども、この世界の文化や神話体系がしっかりとしたSF的設定によって語り直される瞬間はセンスオブワンダーそのものです。
しかし、穏やかな筆運びや<真実の恋>というようなロマンティックな設定とは裏腹に、男と女を<守る性>と<生む性>と語り直す部分や、作者が主人公に与える試練とその結末などは、論理的帰結であるが故に残酷で冷酷だったりもします。
この小説がファンタジーの皮をかぶったSFだということは知っていたのですが、今ひとつ興味が持てずに素通りしていた本です。
たまたま立ち寄った書店で売っていたというか返品もされずに残っていたので、これはもう読むしかないなと思い買って読み始めたのですが、読み終えて、今までこれを読まなかった自分に猛省を促したくなってしまいました。
驚くほど起伏のない物語展開で、語り口も物静か。「」を使わず<>で囲っているせいか、モノローグのようにも思えてしまう会話文も、その効果をいっそう高めてくれます。しかし最初のうちはなかなか話に乗れなかったのですが、うまく同調できるとこの文章が心地よさ変わります。
さらには、起伏のない穏やかな筆運びなので途中まで気付かないのだけれども、いざ気がついてみると作者にとんでもない場所に連れ去られていたことに驚きます。そして早いうちからある程度は予想はついてしまうけれども、この世界の文化や神話体系がしっかりとしたSF的設定によって語り直される瞬間はセンスオブワンダーそのものです。
しかし、穏やかな筆運びや<真実の恋>というようなロマンティックな設定とは裏腹に、男と女を<守る性>と<生む性>と語り直す部分や、作者が主人公に与える試練とその結末などは、論理的帰結であるが故に残酷で冷酷だったりもします。
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