小林 泰三〔著〕
なんと言っても表題作です。これ一本で充分満足しました。
同じような題材を扱っても、イーガンの「しあわせの理由」を小林泰三が書くとこんなふうな話になってしまうんだなあとただひたすらに感心するばかりです。オチはレムの「ビーイング株式会社」といったところなんだけれども小林泰三が書くとなぜか邪悪になってしまいます。
イーガンが無菌室だとすれば小林泰三の方は環境条件劣悪の近所の町工場といったところか、もしくはイーガンはプログラムを組んでエレガントに答えを出しているのに対して小林泰三は電卓片手に一生懸命計算しているような感じ。どろどろのぐっちゃぐちゃでよくもまあこんな邪悪な話に仕立て上げるものです。
この人の場合、感覚的な怖さというよりも論理的な怖さがあって、理詰めで怖がらせてくるからたちが悪い。ホラーが嫌いな自分でも楽しめるのは、この論理的であるという部分が大きいのです。
一方で企業の社内報に掲載されたらしいショートショートは掲載紙が掲載誌だけあってわりと万人受けしそうな話で、箸休め的には丁度いい感じです。
その他、登場人物のむかつく会話が心に染み入りすぎておみごとな「綺麗な子」や、クトゥルーものの「C市」などがおもしろい。
同じような題材を扱っても、イーガンの「しあわせの理由」を小林泰三が書くとこんなふうな話になってしまうんだなあとただひたすらに感心するばかりです。オチはレムの「ビーイング株式会社」といったところなんだけれども小林泰三が書くとなぜか邪悪になってしまいます。
イーガンが無菌室だとすれば小林泰三の方は環境条件劣悪の近所の町工場といったところか、もしくはイーガンはプログラムを組んでエレガントに答えを出しているのに対して小林泰三は電卓片手に一生懸命計算しているような感じ。どろどろのぐっちゃぐちゃでよくもまあこんな邪悪な話に仕立て上げるものです。
この人の場合、感覚的な怖さというよりも論理的な怖さがあって、理詰めで怖がらせてくるからたちが悪い。ホラーが嫌いな自分でも楽しめるのは、この論理的であるという部分が大きいのです。
一方で企業の社内報に掲載されたらしいショートショートは掲載紙が掲載誌だけあってわりと万人受けしそうな話で、箸休め的には丁度いい感じです。
その他、登場人物のむかつく会話が心に染み入りすぎておみごとな「綺麗な子」や、クトゥルーものの「C市」などがおもしろい。
コメント
表題作、たしかに面白かったです。相変わらず、生理的な気色悪さが冴えてましたね。中身はけっこうオーソドックスなSFしていて、そういうところも好感が持てます。
でも最近この作者って〈仮想世界〉ネタがやたらと多いような気がするんですが。
今回は気にはならなかったんですが、早川文庫で出た「目を擦る女」は仮想世界ネタのオンパレードでしたね。もっとも、書き下ろし作品のなかで言及されていましたから作者も自覚しているようですが。
脳髄工場 著者:小林 泰三
≪採点(読むなび!参照)≫
合計:70点 http://koroxkoro.web.fc2.com/
≪梗概≫
犯罪抑止のために開発された「人工脳髄」。健全な脳内環境を整えられることが証明され、いつしかそれ
こんばんわ。
私も、表題作が一番でしたね。あと、ショート・ショート系は安心して読めました・・・基本的に、SF・ホラーはあんまりなほうなんで。だから、今作はトリックが良かったんでけっこう楽しめました。
KOROさん、こんにちは。
私もホラー系はあまり好きではないので、次回作は純粋なSFものを書いてもらいたいなあと思ったりもしています。
もっとも、それじゃ小林泰三らしくなくなってしまうかもしれないんですけど。