殺人混成曲
名前こそ微妙に変えてはあるものの、有名なミステリ作家の九人の名探偵を登場させ文体模写をした作品。
それだけでも愉快な作品なんだけれども、翻訳にあたって都筑道夫が采配を振るってそれぞれの作家の作品の翻訳経験者に個々の探偵の登場するパートを翻訳させたという手の凝りようで、こういう遊び心のある本ってのは大好きです。
とはいえ長いこと積読のままでしたのですが、良心の呵責にさいなまれ意を決して読みました。
誰が誰を担当したのかまとめてみると以下のようになります。
ジョン・アプルビイ(マイクル・イネス) 深井淳
ペリー・メイスン(E・S・ガードナー) 田中融二
ファン・シルヴァー(パトリシア・ウェントワース) 三樹青生
マイク・ハマー(ミッキー・スピレイン) 田中小実昌
ピーター・ウィムジィ(ドロシー・L・セイヤーズ) 中田耕治
エルキュール・ポアロ(アガサ・クリスティ) 福島正実
エラリィ・クイーン(エラリィ・クイーン) 青田勝
ロデリック・アレン(ナイオ・マーシュ) 青木雄造
ネロ・ウルフ(レックス・スタウト) 森郁夫
人選が適切だったのかどうかは、まあスケジュール的な都合とか大人の事情とかもろもろありそうなのでとやかくは言いませんが、ドロシー・L・セイヤーズだったら浅羽莢子だろうなあなどと思ってしまうあたり、時代性を感じてしまいます。
笑えるのはエラリィ・クイーンのパートで、よくもまあここまでやったよというところ。ミッキー・スピレイン、レックス・スタウトあたりも特徴を出しやすいせいか、読んでいて楽しませてくれます。
肝心のミステリとしてはというと、ぎりぎり許せる範囲かな。私はこういうの大好きなんですが、許せない人もいるかも。
ロバート・ムーア監督の「名探偵登場」をもう一度見たくなってきたなあ。
それにしても都筑道夫の「ポケミス全解説」はいつ出るんだろう。七月上旬と言う話を耳にしたけれども……。
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