桜宵

作中で登場人物が「おいしい」とか「絶品」だとか囃したてているのだからビア・バー香菜里屋のマスターの作る料理が美味しそうに見えるのは当たり前というかある意味反則なんだけれども、そんな登場人物のセリフは無視したとしても、作者によって説明される料理の部分を読んでいるとそこで説明された料理を食べたくなってしまうのは確かだねえ。
冒頭の「十五周年」は、そんな都合の良すぎる謎解きでいいのかと思っていたら最後で逆転。なかなかいい感じの終わり方。
表題作でもある「桜宵」は、最後の贈り物に対する受け止め方で印象が変わってしまうかも。私は素直に喜べませんでしたよ、この贈り物。
「犬のお告げ」は表面上は軽い話で、語り手にとってはハッピーエンドなんだけれども、事件の向こう側はバッドエンドで重苦しい話。この辺からだんだん事件そのものが嫌な話になってきます。
金色のカクテルを探す謎の人物の話である「旅人の真実」もなんといやりきれない結末を迎えるし、最後の「約束」に至っては、ああもうこれは……。