- 著 藤村 正太/西東 登/
- 販売元/出版社 講談社
- 発売日 1999-03
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江戸川乱歩賞受賞作と聞いても最近はあまりときめくことがなくなってしまったのですが、かつては江戸川乱歩賞受賞作品をむさぼり読んでいた時期がありました。
その時期にかなり読んだはずだなあと思っていたのですが、いざ読んだ作品の数を数えてみると思っていたほど読んでいませんでした。一口に江戸川乱歩賞受賞作といってもさまざまなジャンルの作品がありますから、偏った読み方をしていたとしても仕方ありませんけど。
西東登の「蟻の木の下で」も当時食指が動かなかった作品でした。
冒頭の熊による殺人から始まり、新興宗教団体の役員選挙問題、とある商社のカメラ輸出のトラブル、第二次世界大戦中の日本軍兵士が起こしたある事件等々、かなり盛りだくさんの内容。
それが文庫にして350ページほどの分量の中で語られるわけですから、個々の問題の掘り下げ方が不足気味かつ、都合の良すぎる展開をしていってしまう。しかし実際に読み始めてみると変に長くないせいかテンポよく話が進み、想像していた以上に面白い話となっておりました。
物語の白眉となるのはやはりタイトルにも使われている蟻の木の下で起こったある事件。この蟻の木の二枚の写真から何が起こったのか判明する場面は背筋がゾクリとします。
そしてもう一つはこの事件の真犯人像。私が子供の頃はまだ存在していた光景でしたが、もうそんな光景などすっかり過去の物となってしまっております。それだけ戦争の影が薄れてしまったということでしょう。
戦争の影が薄れていくこと。それが良い方向へと向かっていることを願って止みません。
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