- 著 奥泉 光/
- 販売元/出版社 朝日新聞社出版局
- 発売日 2007-03
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作者が楽しんで書いた小説だからといって読者も楽しんで読めるのかといえばそうでないことも多々あるのだけれども、この本は楽しんで読める。
地球空洞説を唱えている学者の親娘が地底探検に出かけたまま行方不明になる。学者の弟子が探検隊を編成して捜査に乗り出すのだけれども、その話を主人公のところへ持ってきた主人公の友人、富永丙三郎の真の目的は、武田信玄の隠し財宝にあった。
乗り気ではなかった主人公だけれども、最新のカメラが使えるということと、危なくなりそうだったら途中で帰ればいいというなんともいい加減な考えで探検隊に加わる。
そもそも主人公の友人、富永丙三郎からして口先だけのいい加減男であり、山岳のプロを自称していながらプロでもなんでもなく、彼が登場した時点で探検隊のお荷物になることが100%確定しているというかトラブルメーカーであることがまる判りなキャラクター。
そんな探検隊の顛末が夏目漱石の文体をふまえた軽妙な語りで語られるので、はっきりいえばスリルもサスペンスも何もない。そこにあるのはユーモアだけで、いやもちろん終盤に明かされる地底世界の秘密はなかなかもってすばらしいのだけれども、それ以上に素晴らしいのはやはりこの軽妙な語り。
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