前巷説百物語

前巷説百物語

  •  京極 夏彦/
  • 販売元/出版社 角川書店
  • 発売日 2007-04

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『続巷説百物語』で又市の物語は幕を閉じ、『後巷説百物語』で一応の完結となったので、まさかこのシリーズの新作が出るとは思わなかったのですが、なるほど、『巷説百物語』よりも前の話という設定ですか今度は。
京極版『必殺仕掛人』とでもいえるこのシリーズなんだけれども、妖怪の仕業と思える出来事を人が起こした事件へと解体していく<京極堂>シリーズとは逆に、人が起こした事件を妖怪が起こした出来事へと転換させてしまうのがこのシリーズの特徴。長編ではなく中編という分量のせいか、はたまた基本パターンが決まっていてどの話もそのフォーマットに乗っ取って書かれているせいなのか、<京極堂>シリーズがだんだんと期待しない方向へと変化していったのにたいして、こちらの方は今まで通りなので安心して読むことが出来る。
又市がまだ御行となる前の若い頃の話なので最初のうちは多少違和感を感じたりもしたけれども、又市の成長していく過程、というよりも後の又市へと変わっていく過程の物語としてなかなか面白いのだが、700ページ以上もありながら会話主体なので、あっという間に読み終えてしまう点がちょっと物足りない点である。

コメント

  1. 前巷説百物語|京極夏彦

    ★★★★☆
    「嘘つきが大嘘つきになる決心をするまでのお話。」
    百物語シリーズを知っている読者向け。このシリーズは刊行順に読む事をお薦めしたい。(最初の「巷説百物語」でリタイアしてしまう人が多いというのも分かる気もするが、個人的には「続巷説百物語」が一番面白いと思うので、頑張って2冊目まで行って欲しい。)
    主人公の又一が青臭い。それが良い。
    第一話では、又一はまだ江戸の裏社会のぺーぺー新参者。
    ストーリーは、とある事件に関わった事から「損料屋」の仕事を手伝い‥という流れで進んでゆく。
    ぺーぺーらしく、仕掛けに使えそうなモノや知識が始めにありきで、それを有効活用出来るような仕掛けを急ごしらえで考えているように思える。後手に回っているような状況だ。作者の京極さんが、インタビューにて「この本では又一は結果的に全て失敗している。」と書いていたが、確かに、どの事件でも又一は歯がゆかったり悔しい思いをしている。きっと、この時の痛い失敗の経験があったからこそ、後の“御行の又一スタイル”が出来たのだろう。そう思うと何だかグッとくるものがある。絶対に後手には回らない、という後の又一のスタイル、これらの事件での後悔から来ているのだろうなぁ。
    そんな事を考えながら、他の百物語シリーズを読み返してみたところ、今まで気付かなかったエピソードが光ってみえて驚いた。登場人物のバックグラウンドが全くぶれていないのがよく分かる。‥凄い。
    妖怪を使って事件を決着させる又一スタイルも、まだどこかぎこちなかったりする。
    が、そのぎこちない感じや仕掛け素材を使い回したりする所が、何だか妙にリアリティがあって良い。
    個人的に、「寝肥り」と「かみなり」の妖怪のストーリー的料理の仕方が好き。
    人がバタバタ死ぬし後味の良い話ではないと思うので、単体で読む事はあまりお薦めしない。が、他の百物語シリーズを既読の方は、是非読んでみて欲しい。
    作者曰く「解決する事によって未解決が浮き彫りになるような」事件の構造も見事です。
    出版社:角川書店(2007/04)
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