- 著 クリストファー・プリースト/
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2007-04
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今でこそシミュレーションゲームといえばコンピュータ上で遊ぶものなのですが、昔はテーブルの上で六角形のます目の書かれたボードを広げて遊ぶものでした。もっとも、ボードシミュレーションが無くなってしまったわけではなく、今でも存在します。
ボードシミュレーションゲームはボードの上に数百の四角い駒を配置してサイコロを振って勝敗を決めるのですが、駒の配置は誰かが勝手に配置してくれるわけではないので、自分で置かなければいけません。数十個ならともかく数百もの駒を配置するとなるとけっこうな時間がかかります。おまけに紙で出来ていますから風にも注意しなければいけません。冬ならばまだしも夏場は迂闊に窓を開けるわけにもいかず扇風機をまわすのにも細心の注意が必要です。
さらには何十頁もあるルールブックを事前に読んでルールを把握しておく必要さえあるのです。今にして思えばそこまでの苦行をしてまでも遊ぶ価値があったのだろうかとも思うのですが、暇だった当時はあったのですよ。
しかし、物事には限度というものがあって、SPI社が出した『第二次欧州大戦』というゲームはすべてのマップを広げるためには最低限でも六畳一間の空間が必要な程の巨大ゲームで、家の間取りの大きいアメリカならともかく、日本の一般家庭ではほぼ不可能なゲームだったし、同じくSPI社の『War in the Pacific』は太平洋戦争を扱ったゲームなのだけれども、補給の概念があらゆる要素に付いて回り、戦闘をするよりもひたすら補給を計算するゲームで補給をどのようにするのか考えるだけでも平気で半日くらいかかっってしまう、実質的にプレイ不可能なゲームでした。
それというのもSPI社のはゲーム性よりもシミュレーション性を優先する傾向にあったからだけど、『War in the Pacific』ほどの偏執狂的なシミュレート性は無いもののホビージャパンの『太平洋艦隊』などをプレイしてみると太平洋戦争で日本がいかに無謀なことをしようとしていたのががよく判るものです。
しかしそれが無謀なことであることが判るのも全てを把握できる、いわば神の視点から見ることができるわけで、プリーストの『双生児』も神の視点から見ているからこそ面白く、そして不思議な話なのでありました。もっとも、神の視点から見なかったとしたら面白い話だったのかというと、物足りなかっただろうなあ。
起こった出来事だけを抜き出せば波瀾万丈の物語だけれども、その部分に割かれた分量が少なく、時として書き割りみたいになっている部分も感じられます。
まあ、今をときめくというか、何にもしなくてもみんな褒めるだろうし、難解だといってもそれほど難解でもなく解説を読めばどういう仕掛けなのかは判るし、といっても解説は先に読まずに丁寧に本文の方を読んでいくほうがやはり面白いのですが、というわけで、似たようなネタだったら何もしなかったら誰も褒めそうにないスティーブ・エリクソンの『黒い時計の旅』のほうが好みだったと書いておく事にします。
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