- 著 地下沢 中也/
- 販売元/出版社 イースト・プレス
- 発売日 2007-04
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いやあ、まったくノーチェックだった一冊。表紙をみて何か気になるものがあったので読んでみたのですが、これは思わぬ収穫でした。
地震予知のために作られた人型ロボット「ピッピ」。開発者の一人、瀬川博士の息子「タミオ」と共に成長し、自我こそないもののコミュニケーションができる程の能力を持つ。
やがてピッピは地震の予知に成功し、人類は新たな一歩を踏み出すことになったのだが、ピッピの親友ともいえるタミオが交通事故で死んでしまう。
そしてそれをきっかけにピッピは暴走してしまう。しかしこの話は暴走という単純な話ではない。
第一話目からしてすでに言及されているのだけれども、ピッピの予知は果たして予知なのかという問題が語られる。量子力学での観測問題と同様に、不確定だったものが観測されたから確定したのではないのか、つまりピッピが予知したからそのようになったのではないのだろうかという問題がさりげなく語られるのだ。
では、地震が起こるはずがなかったのに予知したから起こったのかということにもなるのだけれども、そのあたりは実にうまく処理されていて、だからこそ「予知」から「預言」と変化しているのである。
もちろん、まだ完結していないのでこの先どのような方向へと話が進んでいくのかはわからないのだけれども、全ての事象がピッピによって予知され確定してしまうのかそれとも違う方向へと進んでいくのだろうか。
また、物語的には焦点こそあたっていないけれども、問いかけられた質問に対して答えるだけの自我のないピッピが、生前に「ボクのことを忘れないで」といったタミオの約束を守るために自分の中にタミオの行動パターンをシミュレートし、そのシミュレートされたタミオが何故とピッピに問いかけることにより、それまで外部からの問いかけでしか反応しなかったピッピが外部の存在無しで行動し始めるというあたり、自我のようなものの芽生えとしてなにげなくスリリングである。
とはいえども、掲載誌が掲載誌なので完結するのかどうか非常に不安でもある。
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