サムライ・ノングラータ

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矢作俊彦という名前を始めて目にしたのは、大友克洋とコンビを組んだ『気分はもう戦争』で、これがけっこう面白かった。けっこうという言葉が付いているのは、これを読む前に『童夢』を読んでいたからで、こちらの方が好みだったから仕方がない。
次に矢作俊彦の名前を目にしたのが、司城志朗とコンビを組んだ『暗闇にノーサイド』で、これはむちゃくちゃ面白かった。
で、このコンビが続いて書いた『ブロードウェイの戦車』もむさぼり読んだのである。
が、このコンビの三作目『海から来たサムライ』は読まなかった。
『ブロードウェイの戦車』がつまらなかったというわけではなく、ただ単に、『海から来たサムライ』が明治時代の話だったからで、当時の私は時代物にほとんど興味を示さなかったからである。
今では時代物の面白さもそれなりにわかるようになって来たわけではあるが、『海から来たサムライ』は絶版となり読むことすら困難な状況にあったのである。
しかし、本の神様は私を見捨てないでくれていたのであろうか、矢作俊彦と司城志朗のコンビは『海から来たサムライ』を大幅改稿し『サムライ・ノングラータ』というタイトルで出してくれたのである。改稿を企てたのが、偶々私が読んでいない本だったのである、もはや万難を排して読むしかない。
で、読んでみるとこれがページをめくる手が止まらないほど面白いのだ。ホーンブロワーの子孫は出るわ、まだブームになる前に書かれた話だというのに南方熊楠が登場して活躍をするし、『ルパン三世 カリオストロの城』の有名なセリフまで登場する始末。そのセリフを銭形警部ではなくクラリスが言ったと思って欲しい。
そんな遊びが随所に仕組まれ、そして歴史のはざまに痛快な冒険物語を見せてくれるのである。

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