- 著 フィリップ K.ディック/
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2007-05
初期の神林長平の作品を読んでいるような感じでなんだか奇妙な感じでしたよ。でもディックの方が先なんだからほんとは逆なんだけどもさ。
もっとどうしようもない話かと覚悟を決め込んで読んだせいか、思いの外まともだったので拍子抜けしたけれども、もちろん細かなところを見ていけば、あちらこちらやっぱり無理矢理な展開で、ディックだからこそ許せるというか、いや、ディックが好きな人以外はやっぱり許せないだろうなあ。登場するガジェットは今でこそ古びてしまって未来のアイテムでありながら時代がかった様相を示しているけれど、ディックのいつものパターンというかいつものガジェット群で、何の脈絡もなしに登場してきたりするけれど、それを我慢できさえすれば、むしろ楽しくなってくる。無駄に長くないし、書き飛ばし気味ってのも功を奏しているのだろう。なんと言ってもタイトルが素敵だし、ここまで楽しいとこの本が傑作でないのが唯一の欠点に見えてくるから不思議だ。
思い出したかのように新訳で出してくれてうれしいのだけれども、欲をいえば次は『シミュラクラ』を出してくれるとうれしいなあ。
コメント