- 著 佐藤 哲也/
- 販売元/出版社 文藝春秋
- 発売日 2007-08
さて、佐藤哲也である。
ケリー・リンクも確かに凄さを感じさせるのであるけれども、佐藤哲也の紡ぎ出す物語の言葉の重みと比べると、鼻息で消し飛んでいってしまうくらいに軽すぎる。
もちろん軽いから駄目だというわけじゃないんだけれども、続けて読んでしまうと、その差がありすぎてケリー・リンクなどにうつつを抜かしていてオレはなんて馬鹿な事をしていたんだろうと悔やんでしまうほどなのである。
まあたしかに「きりぎりす」のようなとてつもない馬鹿話もある。どのくらい馬鹿馬鹿しいかといえば、身も蓋もないくらいに馬鹿馬鹿しく、どんな話かといえば主人公はある夏の日にバイオリンを弾く巨大なキリギリスと出合うというところから話は始まる。そしてその冬、雪山で首を切られたウサギが多数見つかる。原因を調べにいった猟師も殺される。果たして犯人は誰なのかといえば、だいたい真っ先に想像出来るだろうその通りの犯人なのである。犯人はキリギリスで、驚くべき事にチェーンソーでもって惨殺しまくっていたのである。そしてその現場を見かけた主人公たちはチェーンソーを持った巨大なキリギリスに追いかけられる。キリギリスの犯行に何か意味があるのかは判らないし、教訓もなにもない話だ。
馬鹿馬鹿しい話これだけではなく他にもある。しかし、そんな馬鹿馬鹿しい話をよくもまあこんなに力強く物語るのだと感心するやら呆れるやら。しかし読み終えてみれば、いや読んでいる最中でもその言葉の威力にただ恐れおののくばかりである。言葉だけで異様な迫力のある世界が眼前に、そして頭の中に作り上げさせられてしまうのだ。
難点は、「妻」が登場するたびにその「妻」が佐藤亜紀に変換されてしまうことだ。もっともそれはそれで納得出来てしまうことなんだけれども。
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