- 著 早川書房編集部/
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2007-08-25
確か、全集は全35巻だったはずなのに、この本で収録されているのは34篇と数が合わないなあと思っていたら、月報の方は各3篇の計105篇で、その中から厳選した34篇を収録したということで数に関しては納得したのだけれども、問題は選択した内容の方である。
目次をざっと眺めてみるとそれなりにまんべんなく拾い集めた感じがするわけで、そうなると34篇でなくって35篇にした方が良かったんじゃないのかと思ったりもするし、本文の方を見ていくと思いの外活字が大きく、これだったなら上下二段組みにして全部収録すれば良かったのに、中途半端な本を出しやがってと傲慢にも思ったりもしたのだが、読み終えてからいろいろと思いふけってみると、まあここまでが限界だったのかも知れないなあと思ったりもするのだ。
まあなんというかエッセイなので、こういう時代があったのだという程度でしかなく、あまり資料的な価値は無い。これを読んで懐かしいなあと感じる人たちにとってはおそらくこの活字の大きさというのは親切であろうし、厳選してこの内容というのであれば、残りのエッセイに関しても推し量るべしというものだ。
それにしても、当時の熱気のようなものがあまり感じられず、逆に一歩間違えれば「中二病」と思われても不思議ではないような内容があったりして、読んでいて恥ずかしさを覚えるのは私だけだろうか。
都筑道夫ファンとしては都筑道夫のエッセイが収録されていたのが収穫。後は、福島正実のエッセイがいろいろと思うことがあった。巻末の資料を見ると、福島正実はかなりの数の月報を書いているのだが、その中から選ばれたのがE・E・スミスの巻のエッセイなのである。
スペース・オペラを毛嫌いしていた福島正実が信じられないことにE・E・スミスの巻でエッセイを書いていたのだ。しかもそのエッセイの中でスペース・オペラの魅力を認めているのである。全集の刊行という大儀の中で自己を殺したのであろうか。いや、そもそも福島正実がスペース・オペラを排除しようとしたのは日本にSFを根付かせるためだったのである。
それを考えると、福島正実の苦難と苦渋を感じさせるエッセイであった。
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