- 著 リチャード コールダー/
- 販売元/出版社 トレヴィル
- 発売日 1991-12
トレヴィルなんていう出版社から出ていたために、翻訳されていたことなんて知らなくって、出ていたことを知った後では絶版になっていて読むことが困難な状況だった一冊。
作者紹介には「ピグマリオン幻想をナノテクノロジーや性倒錯、“第二の皮膚”カルチャーなどと接合することで独自のサイボーグSFを創り上げ、ポスト・サイバーパンクの旗手」なんてことが書かれていて読む前から身構えてしまいそうになるのだけれども、読んでみるとそれほど難解でもぶっ飛んでもいなく、意外と普通。しかしこんな話を普通だと感じてしまう自分は普通なのかという疑問も湧いてくるのだが、それはそれとして、SF風味はかなり薄い。
ナノテクに関して言えば、とりあえず現代科学では不可能な技術はナノテクのおかげだということにしてしまっているだけという、ブラックボックスなので、読む方も納得がいかなくってもはいそうですかと無理矢理納得するしかない。もっともそんなことにこだわる人間は最初からこんな本など読もうとは思わないだろうから、心配することはないか。
人形に魅入られた少年が同じ駄目人間まっしぐらで成長して人形を造ろうとするけれども失敗して、その人形そっくりの少女が現れたんで、じゃあ人間を人形にしてしまえばいいんだと驚くべき逆転の発想をする「トクシーヌ」とか、女になりたいのではなく、男が理想とする女になりたいという、あまり理解したくない考えを持つというか既に実行してしまっている男が、嫉妬に来るってしまった結果とりあえず恐るべき陰謀を阻止してしまった「モスキート」とか、確かに面白いのだが、やはりどこかで認めたくない部分があったりする。
『デッド・ボーイ』以降さっぱり紹介されなくなってしまったのは出版社の問題かもしれないけれども、リチャード・コールダーの系譜は牧野修が受け継いでいるのではないだろうか。
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