- 著 リチャード・S. マッケンロー/
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 1987-09
斉藤伯好氏が亡くなられてもう一年以上が過ぎてしまった。エンターテインメント系のSFを翻訳させたらこの人の右に出る人はいないというか、出る本のほとんどが青背ばかりになってしまったハヤカワSF文庫の白背をほとんど一人で背負っていたような気がする。『プルトニウム・ブロンド』もこの人が訳していたので続編の翻訳はもう出ないかも知れないなあ。
というわけでもないのだが、たまたま読んだこの本も斉藤伯好氏による翻訳だった。
維持費が払えず、今にも破産寸前の宇宙貨物船の船長モーゼス・キャラハン、彼の宇宙船はというと、常に警告ランプが付きまくりでいつ宇宙の藻屑と化してもおかしくないオンボロ宇宙船。運良く積み荷の仕事を引き受けたのだが、彼の船には操縦士がいなかった。なんとか曰くありげな操縦士を見つけたはいいけれども、引き受けた積み荷の方も曰くありげ、あらゆる物を恒星化してしまうベータ・トリガーという危険この上もない代物だった。しかも出発間近になって依頼人は何者かによって殺され、おまけに曰くありげな二人の人物が乗客として乗り込んできた。
と初っぱなからなし崩し的に時限爆弾爆発十秒前的な状況に陥るのだが、そこからが非常にもやもやとした展開が続く。かといってつまらないわけでもないのだが、今にも何か起こりそうな危うい状況がひたすら続くのである。何しろ後から乗り込んできた怪しげな二人、主人公たちも怪しいことがわかりきっているのだが、迂闊に手が出せない状況なのである。もちろん相手側も同様。
そして終盤、このたまりに溜まったもどかしさが一気に爆発するのだけれども、これが溜めに溜めまくったせいなのか、ここまで引っ張ってきて、これでお終いなのかといいたくなるほどあっさり一気に爆発してしまう。派手なドンパチもあるのだが、これもあっという間にけりが付く。しかし、しかしだねえ、この身も蓋もなさも含めて、ラストが良いのである。
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