梅田地下オデッセイ

それにしてもデュアル文庫から出る予定だった『梅田地下オデッセイ』はどうなったんだろうか。
というわけで、前回からの続きでハヤカワJA版『梅田地下オデッセイ』を読んでみることにした。
梅田地下オデッセイ

  •  堀 晃/
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 2000

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古書としてはけっこうな高値で売られているけれども標題の「梅田地下オデッセイ」は作者のサイトで読むことが出来るし、この本に収録されている<情報サイボーグ>シリーズの三編はハルキ文庫の『地球環』にまとめられている、といってもこの本も絶版だけど。「塩の指」は創元SF文庫の『遺跡の声』に収録されたので、残るは「アンドロメダ占星術」、「無重力の環」、「熱の檻」、「連立方程式」の四編となるわけだが、これもそのうち短編集としてまとまりそうな気もする。
しかし石原藤夫による巻末の六十頁近くにも渡る解説はこの先ずっと日の目を見ることはないだろうと思うのだ。当時のSFマガジン編集長との蜜月時代のエピソードの部分を削り取ってしまえば可能かも知れないけれども、蜜月時代があったことは事実だろうし。それにしても『太陽風交点』事件さえ起こらなかったならと思うのだけれども、第三者がとやかく言っても仕方ないことである。
で、それはともかく「梅田地下オデッセイ」を読むと、小川一水の「ギャルナフカの迷宮」の原点がここにあったのかとも思うのだが、堀晃が描いている世界の方が生々しくグロテスクだ。そして「アンドロメダ占星術」のラストで見せるビジョンも捨てがたい物があるけれども「熱の檻」の時間理論は凄い。パラドックスの発生を未来の側に持っていくというアクロバティックな論理はむちゃくちゃなんだけどちょっと考えさせられる。
さらにはトム・ゴドウィンの「冷たい方程式」のパロディでもある「連立方程式」は作中において様々な方程式を導いてこれまた圧巻で、この本が絶版というのはつくづくもったいないのである。

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