壊れた少女を拾ったので

壊れた少女を拾ったので (角川ホラー文庫 123-2)

  •  遠藤 徹/
  • 販売元/出版社 角川書店
  • 発売日 2007-11

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姉飼』の時にも書いたのだが、やはり遠藤徹は吉田戦車である。もちろんこれは吉田戦車が遠藤徹という名で小説を書いているという意味ではなく、吉田戦車の描く世界をギャグ無しで小説化したら遠藤徹の世界になるという意味だ。
家電製品との恋愛を描いた「カデンツァ」などはもうこれは活字で書いた吉田戦車の世界そのものにほかならない。主人公の妻は炊飯器に恋をして挙げ句の果てに炊飯器との間に子供を作ってしまうし、主人公はといえばホットプレートと恋仲になりホットプレートは主人公の子供を孕んでしまう。主人公の上司は冷蔵庫と恋愛関係で死後まで一緒にいたいと冷蔵庫を棺桶代わりにすることを遺言として残すのである。
もっとも表題作になると吉田戦車の世界から少しはずれてくるので完全互換というわけではないのだが、それでもその片鱗は見ることが出来る。
「桃色遊戯」は私の好きな終末物なのだが、人類を滅亡に導くのはピンク色の新種のダニである。フレドリック・ブラウンの短編にオレンジ色の世界で狂気に陥る男の話があったが、この世界では一面ピンク色に染まる。何ともいえないシュールな世界だ。
しかし、一番の衝撃は「赤ヒ月」で、カニバリズムをここまでエロティシズムあふれる描き方をされると思わずクラクラと彼岸の世界へと足を踏み出してしまいそうになるのだ。

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