- 著 北山 猛邦/
- 販売元/出版社 講談社
- 発売日 2007-10
一ヶ月後には世界は終末を迎えるという設定は、破滅SFが好きな人間にはたまらないものがある。世界が終末を迎えることに対してのあきらめが入った状況と雰囲気はなかなか悪くはない。
おまけに、世界を破滅から救おうとする超法規的な組織が登場するのだ。彼らは世界滅亡の原因となる「真夜中の鍵」というものを探している。その一方で、「十一人委員会」なる組織があり、彼らも「真夜中の鍵」を探しているのだが、彼らにとっての「真夜中の鍵」は世界を救う代物なのである。
はたしてこんな設定がミステリに必要なのであろうかと思ってしまうし、ミステリに突入などせずこのまま突っ走って欲しいなあと思ってしまうくらいに魅力的な設定なのだが、残念なことに殺人事件が起こってしまうのである。もっとも、このまま突っ走ったとして面白い話になったのかといえば、おそらくならなかったと思うが。
警察は既に機能してはおらず、不可能殺人など行うメリットも無いのだが不可能殺人が起こってしまうのだ。しかし後一ヶ月ほどで世界が滅んでしまうという状況で、事件の謎を解いて犯人を捜し出す意味があるのであろうか。そのあたりはとりあえず強引に突き進んでいってしまうのでうまく丸め込まれてしまった気分で仕方ない。
そもそも、上記の設定の他にも実体のある幽霊などが登場するし、何処までのことが起こりえる設定の世界なのかはっきりとわからないというか、何が起ころうとどうでもよくなってくる。登場人物たちは謎解きをあきらめないのだが、読者の方があきらめてしまうよこれじゃあ。
ではミステリとして駄目なのかといえばそうでもなく、肝心の物理トリックよりも首を切り取った理由に驚いた。説得力があるかどうかは別問題としてそんな理由で首を切り取るとは思わなかったよ。
コメント