不思議の足跡

不思議の足跡  最新ベスト・ミステリー (カッパ・ノベルス)

  •  日本推理作家協会/
  • 販売元/出版社 光文社
  • 発売日 2007-10-20

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ホラーやSF寄りの話が多いので、その方面のミステリが好きな人間であればかなりお買い得な一冊だった。
伊坂幸太郎の「吹雪に死神」が選ばれているのが納得がいかないのだが、まあそれはともかく生命力を吸って生きている謎の人間型生命体が探偵役の石持浅海の「報い」などは、真相を見抜くことが出来なくても納得のいく結論が出せればそれでいいというスタンスで、都筑道夫の<なめくじ長屋>シリーズに通じるものがあって面白かった。ホラーやSF寄りの話が多いのだが、これを含めて意外と本格ミステリ系の話が多いのに驚いたけれども、やはり全体的に後味の悪い話が多い。
平山夢明版『華氏451度』といった趣がある「オペラントの肖像」は単体で読めば後味の悪い話なのだが、それ以上に後味の悪い話が目白押しで、平山夢明の作品であってもごく普通のSFに見えてしまうから不思議だ。
米澤穂信の「Do you love me?」は山口雅也の『キッド・ピストルズの妄想』のオマージュということで、そういわれればそうだなあと思わないわけではないが、最終的に導かれた結論のとんでもなさには驚いた。設定が設定だから許せるぎりぎりの範囲かな。
しかし、一番の目当てだった桜庭一樹の「暴君」には、まいりました。『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の番外編でもあるけれども、オバケヤシキがなんだったのか?桜庭一樹が出した結論の凄さに圧倒されてしまった。

コメント

  1. 読書三昧 より:

    不思議の足跡

    不思議の足跡 最新ベスト・ミステリー (カッパ・ノベルス)
    日本推理作家協会
    SFとかホラーっぽい感じのミステリが15編も入ったもの。
    なんとなくとりとめがないというか、それぞれがあっという間に終わってしまって、「ハイ、次」みたいに読んでしまうせいか、今ひとつ印象に残らなさそう。
    やっぱりしっかりとした長編が好きなもんで。
    だけど、それぞれ思い返してみると、やっぱりそれなりに面白いのだ。
    恐るべし短編ミステリ。
    吹雪に死神(伊坂幸太郎)
    大好き伊坂サンの例の千葉サンが出てくくるモノ。
    だけど……
    山のホテルに大雪で閉じ込められた数人。
    ここでおきる密室連続殺人事件。
    あまりにもフツーでちょっと気が抜けた。
    酬い(石持浅海)
    なんてことないけど、コレなんかちょっと好きかも。
    満員電車の痴漢が、自らの罪の報いを受けるというもの。
    といえばありきたりだけど、人のエネルギーを吸い取って生きるというムーちゃんという子がかわいい。
    あなたの善良なる教え子より(恩田陸)
    罪を犯した人が綴った独白手紙がそのまま短編になっている。
    人を殺めることはすべて罪か。
    なかにはやっぱり真の善があるのか。
    暴君(桜庭一樹)
    いま旬の桜庭サン。
    これも中学生女子の中にある、なんだか黒いモノが見える短編。
    オバケヤシキというのは……桜庭サンらしい結論かな。
    隠されていたもの(柴田よしき)
    コレ、確かテレビで見たわよ。
    世にも奇妙な……だっけ?
    ゴミ屋敷の取材に行った主婦がそこで見つけたモノは、自分が過去に捨てたモノ。
    東京しあわせクラブ(朱川湊人)
    コレ、かなりぞっとした。
    殺人事件にまつわるモノを集めて見せ合うというクラブ。
    怖いけど、なんだかこういう地下クラブとかありそうな気もするし。
    とまどい(高橋克彦)
    ほんやり読んだせいか、結局なんだかよく分からなかったなぁ。
    八百万(畠中恵)
    「しゃばけ」の人よね。この作者。読んだことないけど。
    時代モノってあんまり好んで読まないので、ピンと来ないんだけど。
    コレ、意外と面白かったな。
    人間の姿をしている神様が、ちょっとチャーミングだし。
    オペラントの肖像(平山夢明)
    これはなんかちょっとダメだな。
    近未来のおかしな世の中で生きるおかしな人たち。
    気持ちが悪くなりそう。
    ロボットと俳句の問題(松尾由美)
    ほんわかとした幽霊モノ。
    やさしい幽霊が出てきたりして、ほのぼのとしたようなのって割と好き。
    箱詰めの文字(道尾秀介)
    なかなか面白い。
    犯罪者が犯罪を隠していて、でもその被害者も犯罪を隠していて…。
    チヨ子(宮部みゆき)
    宮部サン、やっぱりうまいな〜。
    これはほんわかあったかくなるようなお話。
    好きな感じ。
    悪魔の辞典(山田正紀)
    結局なんだったんだろう?
    これもよく分からなかった。
    Do you love me?(米澤穂信)
    彼女に殺された男の霊を迎え入れて、話を聞いてやる女の子。
    なぜ自分が彼女に殺されたのかが分からないという彼。
    その話を聞きながら、その理由を言い当てる。
    宗教とか神話とかがモチーフになっているけど、分かりにくくないところがいい。
    商品の詳細
    新書: 428ページ
    出版社: 光文社 (2007/10/20)
    言語 日本語
    ISBN-10: 4334076653
    ISBN-13: 978-4334076658
    発売日: 2007/10/20

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