- 著 連城 三紀彦/
- 販売元/出版社 講談社
- 発売日 2007-08
意外な犯行動機やら、そんなもん解けるかというくらいに複雑な暗号やら何やらと、かなりいろいろなものを詰め込んでいながら新書で180ページほどなので長編としてはかなり短い。
よくもまあコンパクトにまとめたというべきかも知れないが、むしろ細部を書き込んで補強し三倍くらいの分量にしてしまうか、もっと刈り取って半分以下に削り取ってしまったほうが良かっただろう。
前例のある真相はまあ、前例がある故にそれを知っていると破壊力が落ちてしまうんだけれども、そこは作者も確信していたはずで、むしろネタの荒唐無稽さが、前例があるということでうまいこと拡散されてしまったともいえる。
暗号に関しても複雑なわりには登場人物の一人がいともあっさりとさくさく解き明かしてしまって、何じゃそりゃと言いたくなる。
そう考えるとこれはミステリ版ワイドスクリーン・バロックなんじゃないかと思ってしまった。想像の遙か上を行く意外な犯行動機、世界が逆転してしまうような真相、とてつもなく複雑な暗号やトリック、まともな人物などほとんどいなく情念の固まりのような登場人物たち、複雑な暗号でさえあっさりと解き明かす超人探偵。全てが過剰で異常なのである。
で、ミステリ版ワイドスクリーン・バロックとして成功したのかというと失敗している。
狂気の世界において唯一、これを書いた作者は狂っていなかったからだ。
計算高い作者の姿が見えてしまっているところが惜しい。
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