- 著 チャールズ・ストロス/
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2007-12-14
『シンギュラリティ・スカイ』といい『アイアン・サンライズ』といい、大ネタの部分で面白そうなものを使っていながら実際に読んでみると大ネタの部分はそれほど面白くなく、あちらこちらにちりばめられた小ネタの部分の方が面白かったのだけれども、今回もやっぱり同じだった。
設定レベルでは面白そうな設定なんだけれども作者の力の入れ具合は小ネタの方に偏っているので物語全体に緊張感が全然ない。確かに「SF+クトゥルー+スパイスリラー」なんだけれども、足した後お湯で割ったといった感じだ。同じネタでも古橋秀之に書かせたら三倍ぐらい手に汗握る燃える展開の話になったんじゃないかな。
もっとも、真面目に書かずにひねくれたユーモアをまぶしてしまうところがチャールズ・ストロスの持ち味みたいだから文句を言っても仕方ないか。
そのあたりをわきまえた上で読めばけっこう面白かったし、ハッカーネタなんかはツボにはまって楽しかったよ。特に安全なコンピュータの定義なんて素晴らしすぎる定義だった。
しかし一番素晴らしかったのは著者のあとがき。冷戦とホラーとの関係に対する考察やレン・デントンに対する敬愛など、ストロスの意外な一面を見せられたというか、ちょっと愛着が湧いてしまったよ。
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