- 著 曽野 綾子
- 販売元/出版社 出版芸術社
- 発売日 1994-06
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おおぎょるたこさんの『わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか?』のこの記事で紹介されていて気になっていたのだけれども、困ったことに基本的にホラーとか恐怖小説とかがあまり好きではないのだ。いや苦手といった方が良いだろう。
しかし読んでみたいという気は多分にあるわけで読んでみようと思い立ったのだが、ここで紹介されている『異形の白昼』は絶版。この話が収録されている本はというと出版芸術社から出ている『七色の海』が唯一入手可能な一冊だった。しかしこの本、心理サスペンス&恐怖ミステリ傑作集ではないか。読んでみたいという意志があるのだが読もうとする気力が萎えてしまう。というわけで悶々とした日々を送っていたのである。しかしこの先死ぬまで悶々とした日々を送るのがいいのかそれとも思い切って読んで嫌な気分になった方がいいのかを天秤にかけるとやはり後者のほうがいいだろうということで読んでみることにした。
で、読んでみると心理サスペンス&恐怖ミステリ傑作集とあるわりにはそれほど大したことはない。いや話がつまらないというわけではなく怖くはないのだ。どちらかといえば「奇妙な味」という物に近い。不安感を煽っていって最期にどうなるかというと思わず脱力してしまうような結末になってみたり、まあこれは悪くいえばの話だが、曽野綾子がこういう傾向の話を書いていたとは不勉強ながら知らなかったよ。
後半になると恐怖ミステリの度合いが高まって、地味ながらも自分に尽くしてくれる妻のとんでもない性格と行動が次第に明らかとなってくる「お家がだんだん遠くなる」なんかは題名の付け方がとてつもなく素晴らしく、切なさと嫌さかげんをかもしだしている。
そして、肝心要の「長く暗い冬」はといえば、絶対に倒せないラスボスのごとくこの本の末尾に位置して、読む者になんともいたたまれないダメージを与えているのだ。親ならば子供に責任を持てというような説教めいた文章から始まるこの話、読み終えてこの冒頭の文章が胸に重くのしかかるのである。
コメント
Takemanさん,どうもお久しぶりです。
一月以上ブログ更新をご無沙汰でしたのに,それなりのアクセスがありましたのも,記事紹介をいただいていたこともあったと思います。
筒井康隆氏激賞のこの小説はもちろんですが,同様にコメントされていた野坂昭如氏の小説も先ほど読みまして(骨餓身峠死人葛),これもなかなかのものであり,また紹介したいと思っております。
どうも、おひさしぶりです。
「骨餓身峠死人葛」ですか。私も題名だけは耳にしたことがあります。
この間、『名短篇、ここにあり』を読みまして、世の中にはまだまだ凄い小説があるものだとしみじみ思いました。
おおぎょるたこさんの紹介を楽しみにしております。