- 著 小川 一水
- 販売元/出版社 ポプラ社
- 発売日 2008-02
今まで小川一水の小説を読んできて、ある種のもどかしさを感じ続けてきていたのだけれども、ようやくやってくれたという感じだ。
小川一水の持っている健全さというものに対して、世の中そんなきれい事ばかりじゃねえよというような反発心があったのだが、もちろんそれは個人的な感情に過ぎないと同時にそれ故の自分自身のあきらめ感に対しての不満でもあったわけである。
だからこそ、そんな自分のふがいなさをぶん殴ってくれるような力強い健全さを期待していたのだ。
で、とうとう小川一水は僕をぶん殴ってくれたのである。
赤道直下のリンガ島に軌道エレベータが建設される。たちまちリンガ島は宇宙産業の拠点となり世界各国から様々な人間が寄り集まってくるようになった。舞台はそのリンガ島、そして語られるのはそこに住む七人の女性の七つの物語だ。
軌道エレベータが登場し、宇宙産業の城下町だからといって必ずしも彼女たちは宇宙に飛び出すわけではない。宇宙食用の弁当箱のデザイナーだったり、保育園の保母さんであったり、水上タクシーの船長だったりと、どちらかといえば地に根付いている方が多い。
むやみに宇宙に飛び出さず、あくまで地に足のついた、そして力強さと強かさの物語なのである。
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