原子の帝国

原子の帝国 (創元推理文庫 609-6)

  •  A・E・ヴァン・ヴォークト吉田 誠一
  • 販売元/出版社 東京創元社
  • 発売日 2000

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なんとなくヴァン・ヴォクトの『原子の帝国』を読んでみた。いや、なんとなくというのは嘘で、続編の『銀河帝国の創造』が手に入り、ようやく気持ちよく読むことができる状態となったので読むことにしたのだ。
原子力戦争によってそれまでの高度な科学技術の知識が失われ、宇宙船や原子力機関を持ちながらもその動作原理は知らない状態で、科学者たちでさえ迷信を信じ四柱の原子の神を奉っている世界。
主人公は皇帝の孫でありながら、母親の胎内にいるときに放射能を浴びたために奇形児として生まれたため殺される運命にあったのだが、宮廷科学者の一人によって救われ、科学者としての教育を受ける。
名門の出身でありながら身体的ハンディキャップのある主人公が、知性でもってのし上がっていくという物語はロイス・マクマスター・ビジョルドの<ヴォルコシガン・サーガ>にも共通するのだが、この本の場合、主人公は表舞台に出てくることはほとんど無く、主人公の祖母であり皇帝の妻でありながら野心家のリディアによる権謀術数の物語となっている。
遙か未来の物語でありながらどことなくローマ帝国を彷彿させる設定はロバート・グレーヴスの『この私、クラウディウス』が元ネタらしく、未読なのでどこまでそっくりなのかはわからないのだが実際の展開も同じらしい。
というわけでかなり地味なというか歴史書を読んでいるかのような話だったので驚いてしまった。
もう一つ驚いたのが併録されている「見えざる攻防」の主人公の名前で、なんとマイクル・スレード。だからなんなんだと言われるとまあ確かにそうなんですけど。

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