- 著 蘇部 健一
- 販売元/出版社 講談社
- 発売日 2008-02-15
不治の病におかされた我が子を助けるために治療薬を求めて未来へとタイムトラベルをする父親。
梶尾真治あたりが書けば、悲しく切ないタイムトラベル物かもしくは切ないながらもハッピーエンドの感動的なタイムトラベル物に仕上げるだろうけれども、蘇部健一は違った。
他の作家ならば、こんなネタ使えないよなあと捨てさってしまうようなネタを、わざわざ選んで拾い上げて使ってしまったかのような感じでもある。
まあタイムパラドックスの処理の仕方そのものにはそれほど新味はないのだけれども、手堅い処理の仕方でそのあたりは安心して読むことが出来る。しかしこの本の真骨頂はそんな部分ではなく、ラストの嫌悪感なのだ。
といってもいきなり奈落の底に突き落とすような真似をしているわけではなく、読んでいればだんだんと嫌らしさがにじみ出てくるので、読んでいるうちにある程度覚悟ができはじめる。
そもそも主人公は「赤い糸」を信じていながら複数の女性を好きになってしまうのだ。お前の赤い糸は何本もあるのかと言いたくなるほど惚れっぽい。しかし主人公自身はそれほど悪い人間ではなく、要するにごく普通の人間にすぎないのだ。
ただ、それ以上に異常な人間が一人いたというだけにすぎないのだが、それにしても吐き気を催すような結末だった。
コメント
タイムトラベル物ですか。
食いついちゃいました(^^;)
蘇部 健一さんってあんまり読んだ事ない作家さんです。
ラストが気になりますね。
ええ、タイムトラベル物です。
是非とも読んで、この後味の悪さを味わってみてください。(^^;