一日 夢の柵

一日 夢の柵

  •  黒井 千次
  • 販売元/出版社 講談社
  • 発売日 2006-01

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いつの間にか中年と呼ばれる歳になってしまった。
まあその前には、いつの間にか大人と呼ばれる歳になってしまっていたわけなんだけれども、あと何十年か経ってまだ生きていたとしたら、老人と呼ばれる歳になってしまうのだろう。
しかし、問題なのは自分自身にその自覚がないことだ。いつの間にか大人と呼ばれる歳になってしまっても大人という自覚はまあ全くないわけではないけれども、子供ではなくなってしまったという気持ちはあまりない。
それがなにか問題があるのかといえば、今のところ特別問題があるわけではないのでそれほど気にする必要もないのかも知れない、というか気にするつもりなど、毛頭ない のだが。
というわけで、この本を読んだとき、主人公が老人といっても差し支えない年代であることになかなか気がつかなかった。いや、気付いてはいたのだけれども物語の世界に入り込んでしまうとそんなことを忘れてしまう。
おそらくこの本の主人公たちも、自分と同じように、自覚などせずいつの間にか老人となってしまったのだろう。
ただ単純に、肉体だけが老化していっただけなのだ。
自分もあと何十年かしたら、この本の主人公たちと同じようなことをしているのだろうなあ、などと思ってしまった。
そして読み終えてそのことに気付いた時、なんだか未来へとタイムスリップし、そして未来の自分を体験して帰ってきたような感覚におそわれたのである。

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