- 著 ジェイムズ・パウエル
森 英俊 白須 清美 - 販売元/出版社 河出書房新社
- 発売日 2008-03
短編集が三冊も出たせいでジャック・リッチーがちょっと食傷気味になるという我が儘病が発生したわけなんだけど、まあ仕方がない。
で今回、ジェイムズ・パウエルの短編集が出た。
表題作の「道化の町」はこの間、『山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー』で読んだばかりだったのでちょっと期待をしていたんだけれども、これが期待を受け止めてくれるだけの面白さだった。
ジャック・リッチーがあくまでミステリという大枠からはみ出さないでいるのに対してジェイムズ・パウエルは、はみ出るはみ出る。まあとにかく、そこまでやるかというくらいに物語にいろいろなものをくっつけるのだ。
ジャックと豆の木の後日譚である「魔法の国の盗人」などは後日譚である必要がないほどその世界を作り込んで、その上でさらにその物語自身にとんでもないエピローグを用意するのである。まったくどっちが後日譚なんだか。
「詩人とロバ」では十年という期間を与えてくれればロバに会話をさせてみせると王様に大見得を切ってしまった詩人の物語なんだけど、期日がきて王様に言い訳をし始めるのだが、これが物語になっておりしかも入れ弧構造となっているのでどんどんと内側に入っていく。それでいてその物語が何かの役に立つのかといえば対して役に立たない。作者自身が書いてみたかったから書きましたといった感じでもある。
そんな人を食ったような話があるかと思えば、「最近のニュース」は衝撃のラストめがけて一直線の直球だったりするし、どうしてそんな結末に向かうのだと作者に問いつめたくなるような「時間の鍵穴」なんて話もある。
というわけで無駄に凝りまくった話が実に素晴らしい。
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