- 著 ローリー・リン・ドラモンド
駒月 雅子 - 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2008-03
読んでみればこれはF・X・トゥールじゃないか。
いやトゥールは既に亡くなっているのでローリー・リン・ドラモンドはF・X・トゥールじゃないことはわかっているけど、F・X・トゥールが書いた『ミリオンダラー・ベイビー』の警察版だよねえ、これは。
トゥールよりも技巧的で突き放しているけれども、トゥールと同じ視線が感じられる。同じ眼を持っているのだろう。
というわけで、ローリー・リン・ドラモンドが描いた世界は私が視ることのできない視線で描かれており、それはそれで素晴らしいのだが、ミステリとして面白いかどうかというのは別問題だ。
トゥールは物語として描いていたのに対してローリー・リン・ドラモンドは物語としては描いていない。ただありのままの現実を、わざわざ効果的な手段を選んで突きつけるだけだ。
いわゆるミステリとしての面白さは何も無いことは知った上で読んだのでそのあたりは全然問題がなかったし、作者の突き放し具合がはよかったんだけど、最後の話になって突き放しきれなくなってしまったのが残念といえば残念。
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