- 著 フレドリック・ブラウン
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2000
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さて、フレドリック・ブラウンのミステリである。
昨日から今朝ににかけて妻と喧嘩した主人公が仲直りしようと思いながら帰宅すると妻が誘拐されていた。
唯一の手がかりはタイプライターに残された犯人からのメッセージのみ。そこには身代金の金額と二人の名前が書かれてあった。一人は妻を誘拐され、それを警察に届けたために妻を失った男の名。もう一人は犯人の要求通りにしたために妻を失わなかった男の名。そして主人公に与えられた猶予は五日間。
コーネル・ウールリッチが書いたらさぞかしサスペンスフルな物語になったのかも知れないが、この物語を書いたのはブラウンである。
サスペンス要素には重きを置かず、主人公はきわめてシステマティックに考え、そして行動する。
主人公は、犯人探しなどせずに犯人が要求した身代金の額を用意するために手持ちの資産を現金化するためにただひたすら飛び回るのである。
それのどこが面白いのかと問われるとまあ確かにそれほど面白くはないのだけれども、警察の手を借りることの出来ない身である以上、いかにして身代金を用意するかという問題に終始するのはあたりまえのことだ。
しかし、ブラウンの筆運びは軽妙でだれるところが無く意外な結末も用意されている。そして何よりも洒落たラストの一文も含めて読後感が非常に良いのである。
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