- 著 高城 高
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2008-02
今の基準でいえば、長編というよりも中編といったほうがい良いような分量だ。
いろいろなものをそぎ落としたというよりも盛りつけなかったといった感じに近いので良くいえば淡々とした雰囲気が漂っている。もう少しいろいろと盛りつけてもよかったんじゃないかとも思えるのだが、これが著者の第一長編であることを考えるとこれはこれでいいのではないかという気もしてくる。それ故にこれが唯一の長編であることが非常に残念で仕方ないのだが、無い物をねだっても仕方ない。
しかし語り口があっさりとしているのに対して、事件の方は込み入っており、意外な真相が待ち受けているのである。それ故に主人公が超人的な洞察力でもって一気に終盤を突き抜けてしまっている部分が惜しいのだが、それはまあ真相を見抜けなかった人間のひがみかもしれない。
というわけで欠点を挙げればきりがないのだが、読み終えてずっしりと響いてくる題名の意味とこの全体を流れる雰囲気の前にはそんな欠点をあげつらう気など起こらなくなってくるのだ。
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