石の花

石の花 上 (光文社コミック叢書“シグナル” 11 坂口尚長編作品選集 1)

  •  坂口 尚
  • 販売元/出版社 光文社
  • 発売日 2008-01-31

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石の花 中巻 (光文社コミック叢書“シグナル” 12 坂口尚長編作品選集 1)

  •  坂口 尚
  • 販売元/出版社 光文社
  • 発売日 2008-02-29

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石の花 下巻 (光文社コミック叢書“シグナル” 13 坂口尚長編作品選集 1)

  •  坂口尚
  • 販売元/出版社 光文社
  • 発売日 2008-03-01

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シミュレーションゲームが好きなのである。
もっとも、どのくらい好きなのかといえばそれを語ったところで、「けっ、その程度の好きさ加減なのか」と嫌みの一つも言われそうな程度なのでここでは語らないが、ゲームを始める前の事前準備に一時間程度は平気でかかったボードシミュレーションゲームで遊んでいた程度は好きだった。まあ当時はそれしかなかったのだけれども。
なにしろ、畳半畳程度の薄い紙の地図の上に一センチ四方のボール紙で出来た数百個の駒を並べるのである。しかもむやみやたらと並べて良いわけではない。どこにどの駒を配置するかで勝負は決まる。ゲームを始める前から既に勝負は始まっており、強靱な精神力がなければゲームが始まった時点では既に気力は使い果たしてしまう恐ろしいゲームなのである。
さらには数十頁もあるルールブックを事前に熟読し頭の中にたたき込んでおかなければならない。そう、まさにゲームを始める時点で「オレがルールブックだ」と言っても構わない状態になっていなければゲームを始めることさえ出来ないのである。しかし、悲しいことにそんなことが出来ていたら今頃こんな生活をしているわけがなく、ルールの解釈の違いから、戦場がボードから離れ、物理的な肉弾戦へと発展しそうになったことも今では懐かしい記憶だ。
それはさておき、『チトー パルチザンの戦い』というボードシミュレーションゲームがあった。パルチザン対ドイツ軍というゲリラ戦をシミュレートした傑作ゲームだったのだけれども、ドイツ対ソ連、ドイツ対イギリス、連合軍対枢軸軍といった他のゲームと比べるとかなり地味だった。それ故に、興味はあっても結局のところ遊んだことはなかったのであるが、それが不幸の始まりだった。
「地味」という印象がこびりついてしまったのである。「パルメザン」チーズは平気なのに、「パルチザン」とくるとこのゲームのことが頭に浮かび、拒否してしまうのだ。そんなわけで、坂口尚の『石の花』も読まず嫌いで今まで通してきた。
が、今回反省の意味も込めてこの豪華版を読み通すことにした。
で、まず読み終えて、よくもここまで肯定もせず否定もせず、あるがままの世界を描ききったものだと思った。
無論、肯定する物は肯定しているし、否定するべき物は否定している。しかしそれはあくまで登場人物にそうさせているのであって、作者が表に出てそう言っているわけではない。
作者の主義主張は確かにそこにあるのだけれども、それは物語の中では目に見える形では現れていない。
というわけで、今まで目を向けないでいた自分に猛省を促したのだけれども、だからといって戦争を扱ったシミュレーションゲームを嫌いになったのかといえばそうでもない。
戦争ゲームをする視点と戦争について考える視点というのは違うのだ。他人はどうであれ、自分の場合は同じ視点で二つを扱うことは出来ない。
ゲームにする時点で物事は抽象化され、抽象化された時点で何かが失われる。
そして大抵の人間は抽象化しなければ物事を把握できないのである。
だから私は、戦争ゲームを楽しみ、そして戦争の悲惨さを描いた漫画を読んで涙する。どちらも矛盾無く存在する私自身なのである。

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