- 著 都筑 道夫
- 販売元/出版社 桃源社
- 発売日 1981-01
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振り返ってみると都筑道夫の本は意外と復刊されている。
創元推理文庫からは<退職刑事>シリーズと『誘拐作戦』、扶桑社文庫では『なめくじに聞いてみろ』、ちくま文庫からは『都筑道夫恐怖短篇集成』が三巻、本の雑誌社からは『都筑道夫少年小説コレクション』全六巻、そして光文社文庫は<なめくじ長屋>シリーズと『都筑道夫コレクション』の全十巻。
初期のトリッキーなミステリは網羅されているし、『都筑道夫少年小説コレクション』は入手困難だった作品と単行本未収録作品も多数収録と垂涎のコレクションだ。
というわけで今の出版状況を考えると、都筑道夫の復刊数に関してはまあ妥当なところなんじゃないのかと思うのだが、そこはファンの我が儘さで、時代物がもう少し復刊されてもいいんじゃないのかと思ったりもしている。
『神州魔法陣』などは桃源社で出た後、富士見時代小説文庫で文庫化されたけれども、やはり文庫化されたのがちょっとマイナーなレーベルだったせいか、埋もれてしまったままだ。もっとも、全著作のなかで最長の長編なので文庫化するにしても二分冊するしかなく、分量的な面でも不遇な扱いを受けていたという可能性も高い。
しかし、伝奇小説というのは長くなければ面白くないのだ。
いや、面白いからこそ長くなるというべきか。
この本も長さに比例する形で面白い……といいたいところだけれども、まあ……ちょっとそこまで言い切れないところが残念だ。
平賀源内が悪役というのはちょっと数少ない設定だろうし、独楽を自在に操る独楽使いのこそ泥や、やたらと腕の立つ謎の素浪人、アタックアンドカウンターアタックの物語といい、どこをどう切りとっても都筑道夫らしさにあふれていて、読んでいて楽しいのだけれども、手放しで楽しいのは江戸のまちを舞台とする第一部までだ。東海道を通って京都へと向かう第二部になると失速する。
主人公が移動し始めると個々の展開が断片的になり敵の攻撃がワンパターン化してくるのである。もっとも敵の攻撃のワンパターン化には理由があって、終盤にその理由が明らかとなるのでそれはそれで驚かされ、そして納得するのだが、だからといってそれまでの残念さが帳消しとなるとは限らないのである。
だからといって、第二部がつまらないというわけでは決してないのだけれども、都筑道夫の作品は、主人公があまり動き回らない方が面白くなるのではないだろうかと思ったりもする。
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