- 著 朝倉 かすみ
- 販売元/出版社 マガジンハウス
- 発売日 2008-05-22
タイムトラベルとロマンスという組み合わせは相性が良いせいか、掃いて捨てるほど沢山の作品が書かれている。しかもそれはSFというジャンル内だけではなく、他のジャンルでもタイムトラベルが登場する作品は書かれており、ハーレクィンロマンスでさえもタイムトラベルを扱っている作品があるくらいなので、そこまで追うとなると尋常ではない努力が必要だ。
そんなわけだから、昔はタイムトラベル物が好きでよく読んでいたのだけれども、最近はもう飽きてきてしまい、タイムトラベル物と聞くとまたかと思い、逆に敬遠したくなるくらいなのだが、この本の設定には目から鱗が落ちる思いがした。
主人公は三十過ぎの女性。
不倫関係を清算し、会社を辞め、そして亡くなった祖母が住んでいた家に引っ越してきてそこで貸本屋を始める。この貸本屋の名前は「タイム屋文庫」。
ここで扱っている本は全て時間旅行に関係した本ばかりである。そして彼女はこの店で、たった一人のお客を待ち続ける。
ロマンスはあるけれども、主人公も、そして登場人物の誰一人としてタイムトラベルなどしない。だからこの話はSFではない。しかし、SFではないのだが、この設定だけでもうドキドキしてくる。
各章の見出しも「プラスマイナス・ゼロ」「たんぽぽ娘の末裔」「永遠への扉」などと、思わずニヤリとしてしまう題名が付けられていたりする。しかし、それはご飯にかけるふりかけのようなもので、メインの話は毎日食べても飽きない白米だ。つまりごく普通の日常生活。
主人公の想い出は、ごく普通の日常の時の流れのなかで浮かび上がっては消え、また浮かび上がっては消える。それはまるで時を遡っているかのようにである。
コメント
ありがとうございます。
SFの好きなかたにどう読まれるのかが、じつは、いちばん不安でした。
朝倉さん、はじめまして。
SF好きとしては章題の付け方が絶妙だと思いました。
「プラスマイナス・ゼロ」などは、話の流れを読んで、そうきたかと思いましたよ。
タイトルからして気になります。
ぜひ、読んで見たいですねー。
時間モノではないようですが、タイムラベル好きとしては
読まないと!という気にさせられます(^_^)
強いて言えば、ブラッドベリの『たんぽぽのお酒』に登場するタイムマシンといったところでしょうか。
タイムトラベルをしなくってもこれだけのものが書かれてしまうと、凡百のタイムトラベル物は太刀打ちできませんねえ。
タイム屋文庫 朝倉かすみ
オブジェ制作は釼持耕平。装幀は大久保伸子。初出「ウフ.」。柊子は亡くなった祖母・ツボミの家で、時間旅行
はじめまして。
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各章の見出しに合った日常の出来事もよかったですね。
トラックバックなどいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
藍色さん、はじめまして。
>各章の見出しに合った日常の出来事もよかったですね。
そうですね、見出しがタイムトラベル小説などのタイトルのもじりだけではなく、本文のほうでも見出しに合う内容でした。