- 著 佐藤 友哉
- 販売元/出版社 講談社
- 発売日 2008-04-15
全く接点の見られない三つの物語が順番に語られるのだが、そもそもミステリであるので全く無関係なわけなどなく、さらにはそれぞれの章につけられた章題からして、とあるミステリを彷彿させる付け方をしていて、そこから推測するとどういう繋がりになるのか予測もつく。といっても、そんなふうに考えたのも、そういう可能性もあるよなあという程度であって、読んでいる最中はまさか本当にそうだったなどとは思いも寄らなかったわけだから真相を見抜いたというわけではない。
それはともかく、前二作と比べればかなりまともなミステリになってはいるものの、その分逆に読者を選ぶようになってしまったのは、この作者がもともと持っていた資質のようなものなんだろうなあ。
全く説得力のない設定と、ボロボロで今にもすり切れて散ってしまいそうな感性の間で危ういバランスをとりながらというか、バランスのへったくれもなく暴走しまくっているんだけども、その暴走している部分が何故か好みなのである。
しかし、ここまでくるとミステリを捨てて文学へと向かっていったのは正しい選択だったと言えるのだが、そちらへ進んでいったとしても茨の道は続くことには変わりないだろうなあ。
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