- 著 機本 伸司
- 販売元/出版社 角川春樹事務所
- 発売日 2008-05-15
「終末」でありながらここでの「終末」はマクガフィンだ。
人類が滅亡しそうなので恒星間宇宙船を作って脱出しようといいながらも、いかにして恒星間宇宙船を作るのかというのが本題であって、どのような形で人類が滅ぼうと構わないのである。
さらには終盤になるとそれさえもマクガフィンっぽい展開を迎えるのだがそれはさておき、今回も物語を牽引していく人物は嫌な奴である。
前二作まではまだ許せる範囲だったのだが、今回は許せるとか許せないという以前にどうしようもなく情けない奴なので、こんな人物を主役にしてしまう機本伸司という人は実に不思議な人である。
さて今回も、実現不可能にみえる物を作ってしまおうという話なのだが、具体的な数値が問題となる宇宙船だけあって前半は絶望的な答えしか出ない。
あまりにも絶望的すぎるので後半になってそれが実現可能な形となって現れてくると、本当にそうなのかと疑いたくなってきてしまうのだが、まあそのあたりはあまり気にしないでおこう。
著者の他の作品と同様、ひたすらディスカッションに終始する展開といい、読者をSFとしての面白さの場所へ連れて行くのではなく、SFの面白さの部分を身近な日常へと転換させてしまうあたりはまったく変わりがないので、そういうものを期待している場合は大丈夫なのだが、そろそろ別な話が読みたいという気もある。
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