ゴメスの名はゴメス

ゴメスの名はゴメス (光文社文庫 ゆ 4-1 結城昌治コレクション)

  •  結城昌治
  • 販売元/出版社 光文社
  • 発売日 2008-04-10

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『ゴメスの名はゴメス』という題名はインパクトのある題名だし、スパイ小説の金字塔ということも知ってはいたのだが、スパイ物というのはあまり好みではないので敬遠していたのだけれども、こうも結城昌冶の小説が復刊されると、今が読み時だという気がしてきたので読んでみた。
きな臭くはなっているけれども、アメリカの本格的な軍事介入はまだ行われていない時代のベトナムが舞台なせいか、読んでいて異国情緒という以前に全く知らない世界に放り込まれた感じで、読んでいて実に心細い。
しかも主人公はただの商社マンであり、何か特殊な能力や武道の達人などといった秀でた力の持ち主でもないごく普通の一般人で、スパイのスの字すら気配を感じさせない。
主人公の友人であり前任者が行方不明となったためにベトナムに派遣されることとなったわけだが、何がそこで起こっているのか、もしくは何が起こったのか深い霧の中を手探りで突き進むというか、ベトナムという国の中で起こっている何かに全てが紛れ込みそして消されてしまっているという不安感は素晴らしい。
この雰囲気はどことなくディッシュの「アジアの岸辺」と同じ雰囲気がして、スパイ小説というよりも見知らぬ異国の幻想的な話という印象が残った。

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