- 著 桜庭 一樹
- 販売元/出版社 文藝春秋
- 発売日 2008-05-28
世の中には、三部作構想だといってきっちり三部作に仕上げてしまう作家と、三部作の三作目を出さないままの作家と、四部作にしてしまう作家の三タイプがいる。
三作きっちりと仕上げてくれる作家が一番好ましいのだけれども、それでも三作目で失速してしまう場合もあるのでそういうことを考えると三作目を出さないままでいる方が、ある意味良心的かもしれない。四部作にしてしまう場合、これは四部作で終わらない場合も多々あるので、これはこれで良いような悪いようなということで、まあどのパターンであっても一概に良いとはいえないのではないかと思ったりもする。
正直な話、もう第三部は出ないだろうと思っていたので驚いたのと同時に読むのが怖い作品だった。
いっそのこと積読のままにしておこうかとも思ったのだが、まあ思い切って読んでみた。
で、結果としては満足した。いや、多分どんな形であっても出た以上は満足しただろう。そしてそれと同時に不満足でもあるのだ。
ひとつは題名から「恋」が消えたように、第三部では恋が抜け落ちているせいだ。無論、それは読者としての我が儘であることも十分承知の上のことなのだ。だから不満足でありながらも満足している。
しかし一番の理由は理想とする形では第三部は出なかったことだ。良くも悪くも望んでいたのはライトノベルとしての第三部であって、このような形ではなかったのだ。
ああ、多分私はどこかで平行世界の壁をすり抜けてしまったのだろう。元の世界では理想とする形で第三部が出たに違いない。
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