- 著 都筑 道夫
- 販売元/出版社 天山出版
- 発売日 1988-09
『無限の住人』の最新刊が出たのだけれども、ほぼ全編にわたって殺戮の嵐なところが凄まじい。よくここまでやれるものだと感心してしまった。
でそれはともかく、沙村広明の『無限の住人』は「血仙蟲」によって不死身の体となった主人公が、その呪いを解くために千人の悪を斬るという設定の話なのだが、都筑道夫の作品にも似たような設定の話がある。
南米の邪神の呪いを受けて500人を殺すまでは死ねない体となった男が主人公だ。『無限の住人』と比べれば殺さなければならない人間の数は半分なのだが、それでも一冊の本の中で500人もの人間を殺すのは並大抵のことではない。しかもこの話は長編ではなく、連作短編なのである。
で、どうするんだろうと思ったら、最終話まできても目標値まで達成していない。設定はあくまで主人公を動かすためだけの道具であって、物語の骨とはなっていないのである。
だから、死ねない体でありながらも『無限の住人』の主人公のように手足が切り取られたりするような展開は全くない。
主人公は殺人を請け負って、ひたすらというか淡々とそして無情に殺していくだけなのである。
それの何処が面白いのかというと、まあ設定から想像するような面白さは全くないかわりに、依頼された殺人の内容に一ひねりしてあって都筑道夫しか書けないおもしろさがあるのだ。もっとも、都筑道夫が書いたからこそ、こういう展開にしかならなかったともいえるのだが、何ともいえない味わいがあるのである。
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