- 著 結城 昌治
- 販売元/出版社 光文社
- 発売日 2008-06-12
『暗い落日』『ゴメスの名はゴメス』そして『白昼堂々』と読み続けてきて、結城昌治という人は器用貧乏だったんだなあと思った。
もっとも直木賞だって受賞したくらいなので「貧乏」というのはちょっと間違いなのだが、ジャンル作家としてみた場合、何でも器用にこなしてしまっているせいか抜き出た部分がちょっと少ない。いや少ないというのも間違いか。なんていうか、時代を先走りすぎてしまっているといった方が近いのかも知れない。
あまりに先走りすぎているせいで時代が追いついたときには古びてしまっているのだ。
『白昼堂々』もいま読むと、時代背景に添い寝しているせいもあって古びてしまっている。もう少し時が経てばいい具合に古びて味わいが出るのかも知れないけれども、ちょっと出そうもない気がする。
そのあたりをちょっと我慢してみればそれなりに面白いのだが、それでも集団での盗みという設定から想像する面白さからかけ離れているところが残念な部分でもある。要するにいかにして盗むかという点を主眼に置いているわけではないのだ。
そもそも盗みというよりも万引きなのでただひたすらにあっさりとかすめ取るだけなのだ。で、それのどこが面白いのかというと、努力しても全然報われない部分で、そのあたりはドナルド・E・ウェストレイクの<ドートマンダー>シリーズに通じる物がある。
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