- 著 ベルナール ヴェルベール
- 販売元/出版社 日本放送出版協会
- 発売日 2008-07-25
思わず表紙買いをしてしまうことがある。
この本も、買うかどうか迷っていたのだけれども、実際に手にとって、表紙がメビウスで、しかも表紙以外でも数枚の絵が使われているのを発見してしまったとたんに自分の中での購入・見送りバランスが購入の方に一気に傾いてしまった。
というわけで、メビウスの絵だけで半分以上満足してしまっているので、安心して読むことができた。
滅亡の危機に瀕していた地球を捨て、世代間宇宙船を作って生存可能な新たな星を目指して飛び立つという話なのだが、最初にまず逃げたいという意志だけあって、どちらかといえば手段のために目的を選ばず、といった印象なところが面白い。
最初のうちはあまり危機に瀕しているという状況ではないのである。宇宙船を作っているうちだんだんとまずい状況になっていくのだ。
世代間宇宙船ということで、機本伸司の『僕たちの終末』とどうしても比較してしまいがちなのだけれども、こちらはハードSFではないのでどうしても分が悪い。何しろ、最初のうちは二千人の人間を乗せる船だったのに、その人数が最終的に十四万四千人にまでふくれあがるのだ。それに合わせて船のサイズも巨大化、全長三十二キロメートルにも及ぶ、船というよりもコロニーに近いものになるのだけれども、これがなんと、地表から飛び立つのである。
十四万四千人を乗せたコロニー型宇宙船が地表から飛び立つなどと、まあここまでくると、文句を言う以前に作者のふてぶてしさに脱帽せざるを得ない。むしろ、そんな光景を見てみたくなるほどだ。
で、非常識的な人数を乗せた宇宙船は目的地まで千年の旅をすることとなる。人数もけた外れならば日数もけた外れだ。
しかしそんなことで驚いてはいけない。千年の時が経過し、目的地までたどり着くところまで物語は描かれるのだけれども、目的地に着いたときには十四万四千人いたはずの人口は、なんとたったの六人になってしまう。しかも男五人に対して女一人というぎりぎりの崖っぷち状態。実に意表をつく展開なのだが、真に驚く展開は目的地の惑星に降り立った後に起こる。
目的地への着陸船は、二名しか乗る事が出来ないということで男女二人だけが着陸する、残った男四人は世代間宇宙船でそのままあてどもない場所へと放浪し続けるわけで、これはこれでまあこれで凄い展開なんだけど、残された最後の希望となったはずの二人は最初は仲良くしていたのだけれども途中で喧嘩し、離ればなれになってしまうのである。そして驚くべき事に女性の方が死んでしまう。
全ては無駄に終わったのか、気になった人は実際に読んで貰うとして、読み終えてみるとなかなか巧妙に構成されていて、ああ、なるほどこれをやりたかったのだなと思わせられるのであった。それにしても非道な展開だよ。
コメント