落下する緑 永見緋太郎の事件簿

落下する緑 (創元推理文庫 M た 6-1 永見緋太郎の事件簿)

  •  田中 啓文
  • 販売元/出版社 東京創元社
  • 発売日 2008-07

Amazon/bk1/livedoor/楽天ブックス


田中啓文には珍しく、駄洒落が全くない作品。
駄洒落の無い田中啓文の小説なんて、田中啓文っぽさがなくって、ただの普通の小説になってしまっているだろうなんて杞憂はさすがにしなかったけれども、ちょっと不安ではあったのは確かだ。
しかし読んでみるとやっぱり田中啓文の小説であって、駄洒落が無くったって大丈夫じゃないか。
まあ若干、思っていたよりもミステリ度が低くって、日常の謎系の話だったんだけれども、殺人事件なんかが起こって殺伐とした内容よりも、こっちのほうがいいよなあ、やっぱり。
何よりも、主人公がジャズ以外の物には全くの無関心、それ故にジャズに対する想いと田中啓文独特のオノマトペとが相成って、読んでいて実にすがすがしい。
途中で師弟関係の話が何話か登場して、そのあたりは笑酔亭梅寿が主人公の<ハナシ>シリーズとも共通する部分があったりして、こういう人情話を書くことが出来る人間が、『水霊』やら『蝿の王』やらといった話をよくも書くことが出来るものだと妙に感心したりもする。
ミステリファンとしては謎の部分はともかくとして最終話が一番楽しめたわけで、何しろ、セッションすれば犯人が判るってんで容疑者達とセッションをしてしまうのだ。犯人を見つけるためにポーカーしたり、ブリッジしたりといろいろあるけれども、セッションするってのはいいなあ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました