- 著 多島 斗志之
- 販売元/出版社 双葉社
- 発売日 1999-08
多島斗志之は『海賊モア船長の遍歴』しか読んでいないのだけれども、他の作品の傾向からして冒険小説系が主流の作家だと思いこんでいた。
しかし、『少年たちのおだやかな日々』を読んで驚いたのなんの、思いこみはやはりいけないものであることを痛感した。
『海賊モア船長の遍歴』の爽快さから180度かけ離れたこの不愉快さはなんともいえないものがある。というかこんな作品まで書いてしまう多島斗志之の作風の広さに脱帽してしまった。
とにかく全7編、どす黒い結末めがけてまっしぐら。作者の底意地の悪さが丸見え……というのは言い過ぎだと思うけれども、あざといまでに酷い展開をさせるのだ。しかもこの双葉文庫版はあとがきも解説も無い。こういう嫌な話を読んだときこそ、あとがきや解説を読んで気分を落ち着かせてから本を置きたいところなんだけれども、それが出来ないので嫌な気分のまま本を置くこととなる。
例えば、あらかじめ何枚かのカードに罰ゲームの内容を書いておき、サイコロを振って数の少なかった方がカードに書かれた罰を受けるというゲームを友達のお姉さんとする事になった主人公の話である「罰ゲーム」では主人公の考えた罰ゲームは下着姿で逆立ち30秒とかいった程度の内容なのだが、お姉さんの罰ゲームは想像の斜め上を行く。彼女の書いた罰ゲームは……気絶するまで自分で自分の首を絞めるである。無論これは序の口でどんどん凄まじくなる。
一方で、姉の婚約者は変質者なのかも知れないという「嘘だろ」では疑心暗鬼の状態が続く最後の最後で驚愕のどんでん返しが待ち受けていて、そこまでして嫌な話を書きたいのかお前はと作者に問いつめたくもなったよ、まったく。
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