- 著 カズオ・イシグロ
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2008-08-22
凄いという評判だった本をようやく読んだ。
SFネタに関しては早い段階で想像がつくし、作者も最後まで隠すつもりがなかったせいか、中盤で奇妙な世界の真相は明らかになる。
まあ普通ならばこのネタを最後まで引っ張っていって一気に畳みかけて感動やら衝撃やらを読者に味わらせてやろうと目論むのだろうけれども、この作者はそんなことはしない。だからドラマティックな展開など何もない。
逆に、何でこんな書き方をしたのだろうかと思ってしまうくらいにもったいない書き方をしているのだが、そう思ってしまうのはエンターテインメントに毒されてしまっているからで、ドラマティックな内容をあえて押さえて静謐といってもいいような書き方にしたところが凄いところなのだ。
描かれている事柄は凄いのに、あくまで静かに、淡々と、それでいて無感情ではなく感情的な描かれ方がされている。こんな書き方があったのかと思わず感動してしまった。
もっともそれ故に、主人公達の行動や考え方が不自然というか、お前らそれでいいのかと問いつめたくなる気持ちがわき起こってくる。ついついSF的にみてしまうと、やはりそのあたりの部分が物足りないのだ。
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