- 著 ドナルド A・スタンウッド
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2008-08
世間での評価は高いのだけれども、あまり楽しめなかった。
提示される謎は確かに魅力的なのだが、しかし、50年前のタイタニック号での謎、20年前の殺人事件、そして今現在起こっている殺人事件と、ここまててんこ盛りだと、ついていけない部分が出てしまってどうでも良くなってきてしまう。
作者がこの後、箸にも棒にもかからない二作目を書いたっきり沈黙してしまったのもわからない話ではない。
そもそも都合がよすぎるのだ全体的に。
主人公は警察官だったけれども20年前の殺人事件でへまをしてしまい退職せざるを得ない状況になり、そこから人生の転落が始まるかと思いきや、作家に転向してそれなりのヒットを飛ばし、それなりの富も名声もコネさえある始末。そんなわけだから金とコネを使いまくって世界各地を飛びまわり、謎を解明しようとするのだ。
そのおかげで、物語はだれることなくテンポよく進むのだが、あまりにもテンポよく進むので全然難事件の気がしない。
おまけに主人公が追い求める謎の向こう側には世界有数の金持ちがいて暗躍しているのだが、これまたあたりまえのことだが金に任せて暗躍しているのである。
さて、事件の黒幕というか真犯人はといえば、金持ちではないものの、まあなんというかあきらめが悪すぎるというべきかか50年もそんな事に固執し続けていてバカじゃないのといいたくなるのである。
ある意味犯罪行為をするという点においては天才的なのかもしれないけれども、まったく理解しがたい行動原理であって、まあ確かに驚愕の真相だったよ。
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