- 著 立川 談四楼
- 販売元/出版社 ランダムハウス講談社
- 発売日 2008-08-08
正直なところ、落語の世界しか描けないのだろうと思っていた部分がある。
つくづく読者というものは傲慢なのだと、他人事のように思うのだが、この本を読んで反省した。
一つや二つ、落語の世界の話を読んでわかった気になっていただけなのだ、「先立つ幸せ」と「はんちく同盟」を読んでそれを痛恨したのである。
「先立つ幸せ」は同性愛の師匠をもった前座の話なのだが、これが実に素晴らしい。芸人でありゲイ人であるという含みはさておき、人の心の機敏さと微妙な感情の揺れ動きと、たまたま落語の世界を描いているだけであって、この人は最初っから人を描いているのだ。
ああ、まったくもって何でこんな事に今まで気付かなかったのだろうかと思うのだが、やはりそれは表面上の話のレベルで十分に笑わせられるほど面白かったからで、その笑いの部分を取り払ってみると、ああなんと素晴らしい世界がそこに存在していたのだろうか。
そして、障害を持つ芸人が集まってはんちく同盟というものを結成してしまう「はんちく同盟」などは障害を扱っていながらその扱いぶりがこれまたうまいかったりする。そのさじ加減がまたいいんだなあ。
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