- 著 小泉 喜美子
- 販売元/出版社 集英社
- 発売日 1980-12
他の二作がシリアスな内容であるのに対して、この作品は唯一コミカルな内容と展開。
それ故にか、他の二作に比べると今一つ評価が低いような気もするのだが、やはりそれは作者が長編を五作しか残さなかったという理由も大きいのだろう。急逝していなければ、おそらくはこの系統の話を書き続けていたはずで、急逝せずにもっと沢山の作品を書いていたならばと思うと残念でならない。
ヨーロッパの架空の小国での陰謀。そこで起こるのは「青ひげ」を彷彿させるような出来事。無論、陰謀と「青ひげ」は直接は結びつかず、平行する形で進行するのだけれども、最終的には全てが一つとなる。
洒落たミステリというのはこういうものを言うのだといわんばかりの雰囲気造りは読んでいて楽しいし、作者のミステリ観、とくにクレイグ・ライスが好きだった事を考えると、まあ確かにクレイグ・ライスではないけれども、小泉喜美子流の洒落たミステリなのである。
これは小泉喜美子が残してくれた、大人のための童話なのだ。
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